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社歌対談

社歌対談 弓狩 匡純 氏×西尾 竜一

弓狩匡純(ゆがりまさずみ)氏プロフィール

作家・ジャーナリスト。1959年兵庫県・宝塚市生まれ。

県立藤沢西高校卒業後、渡米。テンプル大学にてアメリカ文化を学ぶ。
教養学部アメリカ研究学科を卒業後帰国。
80年代半ば、ベトナム、カンボジアにおける報道取材を皮切りに世界50カ国以上の国々を訪れ国際政治、経済から文化、スポーツに至る幅広い分野で取材・執筆活動を行う。 

世界の国歌を論じた『国のうた』に引き続き2005年、大手40数社に取材した『社歌』(共に文藝春秋刊) を執筆。また、本邦初のコンピレーションアルバム『社歌』や『鉄歌』(キングレコード) などの監修も務める。現在、社歌専門家・ナビゲーターとして、企業向けの講演やさまざまな取材・執筆活動などを続けている。東京都在住。

弓狩匡純氏による社歌講演
「社歌から紐解く企業文化」 講演依頼のご希望がありましたら、
お気軽に弊社あてにお問い合わせください。

対談 ※この対談は2010年7月9日に行われました。

−「社歌」がコミュニケーションツールとして、あらためて注目されている

西尾
弓狩さんが手がけられた『社歌』の本や、コンピレーションアルバム『社歌』が好評だと伺っています。今の「社歌」をとりまく環境をどのようにお感じになっていらっしゃいますか?
弓狩

本を出したのがもう4年近く前になるのですが、当時は今ほど「社歌」は注目されていませんでした。「社歌」の話をしても「何それ?」という感じで受け取られていましたが、今では興味を持って「社歌」の話を聞いてもらえるようになりました。時代がある意味では追いついてきたのかな、というのはちょっと感じますね。

弓狩匡純氏
▲弓狩匡純氏

本に関しては、多岐に渡る方々に評価して頂いていて、特に経営術であるとか、企業文化の専門家の方であるとか、企業経営をなさっている方からの反響が良かったです。
一方で、当初は想定していなかった使われ方なのですが、就職活動の学生が企業選びの際に、企業情報からは見えてこない企業カラーを「社歌」から見出すといった使い方で受け入れられました。

そもそも、「社歌」の生い立ちということでいえば、近代的な企業形態が出来て初めて「社歌」のニーズが出てきたわけですね。
家族経営であれば、コミュニケーションは「ツーといえばカーというツーカー」な訳ですよ。
何のコミュニケーションツールもいらない。家訓で良かった。これに第三者が入ってくる。

たとえば地方から就職してくるとか、バックグラウンドの違う人間が入ってきて1つの組織を作ったときには、家訓じゃもう駄目で、これが社訓になっていくわけです。
さらにもう少し汎用性の高いツールが必要になってきた。そこで生まれてきたのが「社歌」なんです。
極端に言うと昭和初期の労働者で文字も読めない方もいらっしゃった、そういう方も工場で一緒に働いていて、コミュニケーションをとる必要がある。

そういった中、「社歌」をみんなで歌うということで、同じ空気であるとか、理念を共有するというような、非常に重要な役割を果たしていたと思うんですよね。

最近は企業合併や買収が増えてきて、企業形態は巨大化し、ホールディングスになってきています。そうすると傘下の違う企業文化を持った会社が一堂に会さなければならない。
ここでのコミュニケーションというのが非常に難しい。業種の違いや、会社に対する考え方も違う人たちが一緒になる場合のコミュニケーションをどうすればいいかというのが、今、特に企業の経営者を悩ませている。

こういった背景が「社歌」というコミュニケーション方法への関心を生み、あらためて社会が注目し始めた理由だと考えます。

西尾

弊社へのお問い合わせでも、最近は「グループ歌」というのは確かに増えていますね。

おっしゃる通り、あらためて企業文化の新たな創り方をさまざまな企業が模索し、構築しはじめている。そういう意味では、弓狩さんや弊社が手がけている「社歌」が、単にニッチな分野のコミュニケーション手法の提案にとどまらず、新たな企業文化創造の一翼を担える可能性があると言えますね。

弊社では、社員の社員による社員のための「社歌」なるものを提唱し、社員参加型の社歌づくりが、つまりは企業文化を作っていく一つのプロセスになるのではないか、と思っているのですが、「社歌」の作り方に関して弓狩さんはどのようにお考えですか?

西尾 竜一
▲西尾 竜一

−「社歌」づくりのプロセスに大きな価値がある

弓狩

「社歌」というのは、結果よりプロセスが大切なんです。
社歌を作るプロセスに価値がある。社員がみんなコミットして、時間をかけて作っていく、そのプロセスが社内のコミュニケーションやユニット作りにものすごく効果があると思います。

そのあたりを企業が注目していけば、会社をまとめるプロセスとして、非常に効果があると思います。

社歌の歌詞というのは、伝統的に社員が作るというのが多いですね。
まずは社員から歌詞を公募して、有名作曲家さんに曲を付けて頂くというように。
作曲公募というのはさすがにあまり見られませんが、テクノロジー的には作曲も気軽に出来る時代なので、社内で作曲公募というのも増えるかもしれませんね。

弓狩匡純氏

それと少し話題は飛びますが、「社歌」って絶対に変えてはいけないものだと思っている方が多いですね。一回決めたら、いじっちゃいけない、と思っている方は案外多いです。でも、それは決して正しくない。

創業何周年といった節目、節目で変えていくということは、それほど珍しい事ではないです。
イメージを大きく変えたくて、作詞、作曲からガラッと変えることもありますが、詞をそのままでアレンジを変えることで今の時代にマッチする「社歌」にする事もできるはずです。

例えば戦前に出来た行進曲風の「社歌」でも編曲さえ変えれば意外と今風のいい曲になるんですよね。


例えば、ジャズ風、ポップス風、ララバイ風にアレンジするだけでもいいものができますよ。
若い人もいいなと思える「社歌」にできる。編曲を変えるというやり方は、これからも増えると思います。

西尾
そうなんですよ。最近は編曲を依頼されるケースもあります。
実は社員が、ピアノで指1本で作ったものや、ギターのコードベースで創ったものがある、それを綺麗に編曲して社歌として作ってほしいというオーダーも出てきていますね。
弓狩

作詞にしても作曲にしても恐れる必要はなくて、フィニッシング、編詞や編曲はプロに任せればいいんです。オーケストレーションとか含めてね。そういった自由さが「社歌」にはあると思うんですよ。

西尾

特に作詞の部分。社員の方が、自分の出した言葉というのが歌詞に反映されているというのはとても喜んでいただけるんですよね。その言葉は、自分たちが大事にしている、共感している言葉になりますから、反映されていれば、我々はここに参加しているんだという実感が強くなるのでしょう。

公募にしても最近増えているのが、歌詞全体の公募はもちろんありますが、その中からいくつかのキーワードをピックアップし組み合させてもらって、プロの作詞家がまとめる、という方法です。そうすると一人の人が作ったものではなくて、多数の人の考え、ひいては皆さんの総意がそこに入っている歌詞になるんですね。

曲にしてもそうで、明るい音階なのか、ちょっとバラード風なのか、という意見を組み入れて作るので、自分たちの意見が反映された「社歌」が出来るというのが、今までの流れと変わってきているのかなと思います。

弓狩

「社歌」のおもしろさというのは、特に詞の部分で言えば、エッセンスなんですよ。何文字しか無いわけですね。だらだらと社史のように書けない訳で、何文字でリズムもあるため言葉数も決まってくる。

そこに会社の理念とか理想とか、歴史とかを盛り込んでいかなければならない。ある意味で非常に研ぎ澄まされた言葉が並んでくる、それを聴けばだいたいどういう会社なのか分かるというおもしろさがあると思うんですよ。

それをどうコミュニケートするかというのが、今度は曲なんですよね。
まずは最低社員が共有できる曲にしなければならない。会社には老若男女がいるわけでそこが難しい。

今風の曲調にすると高齢の社員が歌えない、ついて行けない。これでは意味がない。あまり男臭いものだと、女性社員がついて行けない、となるわけで、いろんな方々が一様にアクセプトするのは難しい。

みんなが1回聴いたら覚えられるものでないといけない。 いわゆるオーケストレーションですよね。
老若男女の社員がいる、技術の人も営業の人もいる。その人たちをオーケストラに見立てて、どうやって参加できるかと。邪魔な音があってはいけない訳です、みんな必要な訳です、それをどうやってオーケストレーションしていくかが一つの「社歌」の醍醐味ですね。

−これから「社歌」の活用は多様化する

西尾

さて、少し話は変わりますが、「社歌」は作ったけどお蔵入りしている、とかウチの会社に社歌ってあったっけ?というお話をよくお聞きします。せっかく作った「社歌」が歌われない、聞かれない、というのはとても寂しい気がするのですが、活用の面で弓狩さんから見て、変わってきていると思われる部分はございますか。

弓狩

これから「社歌」の活用は多様化すると思いますね。 もちろん一番多いのは『みんなで歌う』という活用方法。カラオケ文化の影響が大きいと思うのですが、最近はみんなで集まっても個人が自分の好きな歌をカラオケで歌う、ということが一般化しています。
個人のカラオケを否定するわけではないのですが古来、収穫の祝いには世界共通で『みんなで歌う』ということがあったわけで、それは労働を互いに評価し、讃えあうという意味で非常に重要なことであったはずです。

現代になっても、『みんなで歌う』ということは気持ちの高揚やその場を盛り上げる手段に変わりはありません。そういう観点から言うと、「社歌」は絶好の材料なわけです。
ですから、式典や朝礼で『みんなで歌う』、この活用はこれからも変わらずあるはずです。
また、アイデアガレージさんでやってらっしゃる「社歌」のカラオケ入曲サービスは面白いと思いますよ。それを半分プライベートの空間でも楽しめるわけですから。

さらに「社歌」や「グループ歌」ではなく、営業歌、部署の歌みたいなものが出てきそうですね。
営業ですと朝、外回りする前にみんなで歌って勢いを付けるとか、キックオフソングみたいな用途ですとか、「社歌」から枝分かれした新しい歌の出現ですね。

もう一方で考えられるのが顧客コミュニケーションに「社歌」を使うなど、クライアントやマーケットを意識した「社歌」の活用ですね。そもそも会社の「社歌」というのは「研ぎ澄まされた言葉の羅列」な訳ですよ。
会社のイメージを伝えるツールとしてはうってつけで、どういう会社かというのを訴える為には「社歌」が一番わかりやすい。

今までは社員のコミュニケーション用としてインナー向けに作られていた「社歌」ですが、うちの会社のイメージ、理念、ポリシーはこうですよと一般の消費者にも理解してもらおうとする形で外に出していく動きが出てきています。
今後どんどん出てくると思います。

西尾

西尾 竜一

私が感じているのは、「社歌」が『歌わされている』という半ば強要されるものであるというイメージから、社員が自発的に歌いたい、聞きたいものに変わってきている、ということですね。

弊社がやらせていただいている社歌制作研修や社歌プロジェクトで作られた「社歌」には、みなさんの想いが詰まっている。ですから愛着のある歌になっているんですよ。

一つ事例を挙げると、ある会社では、作った「社歌」をキックオフイベントの際に社内バンドが演奏するんです。 その時は大合唱だそうです。

それから、曲調もPOP調のものもあるので、一般の曲と一緒に自分のミュージックプレイヤーの中に入っている、なんてこともお聞きします。

ところで、弓狩さんはそろそろ「社歌」の第4次ブームが到来する、とおっしゃっていますが、どんなことなのでしょうか?

弓狩

今まで「社歌」というのは、経済が絶好調の時か、不況のどん底の時にブームになるという傾向があるんですよ。それが私の調べたところで過去三度来ているんです。

景気が良いときは更に頑張ろう、勢いを付けようというので「社歌」を作る。景気の悪い時というのはみんな一致団結して頑張ろうという時にテーマソング、主題歌を作って組織をまとめるという傾向がある。

今、経済は底っていう感じですよね。中小企業はまだまだ厳しい状況だと思います。
中小企業であれ、大企業であれみんなが気持ちを一つにする事が大事だと思うんですよ。
そういう時に歌って非常に効力を発する。この時期に「社歌」の第4次ブームが来るのではないか、と。

西尾

最後に弊社のような社歌制作会社に対してはどう思われますでしょうか。

弓狩

おもしろいと思います。かつて「社歌」の制作を担うという会社は無かったと思うんですよ、非常に新しい分野だと思います。それこそ「社歌」を持っている日本企業は何千とある。
活用していない企業も含めて、そこが目覚めて、改訂するとか、作り直すとか、マーケットは非常に大きいと思います。

中小企業から始まって、大企業もそうですけど、「社歌」を一つのツールとして活性化していけば、全体の経済も少しずつ元気が出てくると思うんですよ。ひとつのきっかけとして企業を元気づけてもらえれば良いと思います。

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